第19回「税務署に相談するのも手じゃない?」
2017年の仮想通貨の価格上昇から打って変わって、2018年はだらだら下げてきており、税金貧乏が発生した人もちらほら。
税金どうのこうのってよりも前にウォレットの履歴はあるけど、何をしたのか全然思い出せないから放置、申告すらしてませんって人も。
いやいや、取引は思い出せるんだけどね、損失が出ているはず。でも、資料が全くない状態だからウォレット見ると何か隠しているんじゃないのって思われるだろうなって感じで、不安。課税されたらどうしようって人もいるでしょう。
上記の様な場合には、別に悪いことをしようとしている訳ではないので、普通に税務署に相談しに行くのも良いのではと思っています。
なるべく申告を促すように税務署は怖い存在だと刷り込んでますが、基本、税務署は親切です。
税務署の方と話をする機会は多いですが、税務調査の時でも酷いと思う状況になったことはありません(処理間違って、酷い状況にはなったことはありますが、それは事実だからしょうがない)。
地方の税務署&税理士の立場だから、ということではないと思います、たぶん。
悪いことしたから、あとから税金&罰金をとられているだけであって、真っ当に納税しようとしている人に対して不当な対応をすることはありません。
もちろん何にも考えなしに行くのは、自分に不利側に振れる可能性があるので、相談しに行くとしても、わかるところについては資料なり、何をしたのかハッキリさせて、不当に納税することのない様に説明しながらやっていくべきです。
落としどころを見つけるなら税務署に相談した方が早い。
税理士の立場からすれば、わからないから「推計」で計算しましょうとはなかなか言えません。
所得税法156条、推計課税があります。
(推計による更正又は決定)
第百五十六条 税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額(その者の提出した青色申告書に係る年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額並びにこれらの金額の計算上生じた損失の金額を除く。)を推計して、これをすることができる。
税務調査において実額で計算できない場合は、「推計」によって所得を計算することです。
最近では、大阪のたこ焼き屋が脱税していたということで話題になりました。
(日本経済新聞:たこ焼き販売の女、1.3億円脱税容疑 大阪国税局が告発)
現金売上で帳簿も何にも残していないのにどうやって所得を計算したかというと「推計」によって計算したと考えられます。
推計には決まった計算方法はありません。「合理的な方法」であればどんな計算方法でも良いのです。
大阪のたこ焼き屋のケースですと、「現金売上」がいくらなのかわからなくても、「原材料」の仕入に関しては、業者の特定は容易である(たこ焼きの購入者は、不特定多数だが、仕入業者は限定されるので、反面調査で仕入業者の帳簿から確認する)と考えられるので、そこから原価率などを用いて逆算し、売上金額を推計した結果が、3年間で売上5億円ということになったと考えれます。
「推計」して課税となると個別の事情は考慮されないので、真面目に実額で計算するよりも、税金が多くかかることになる可能性が高いですが、税務署は、税金を課税するにしても闇雲にできる訳ではなく、税務署も合理的な計算が出来るような根拠が知りたいのです。
2017年の仮想通貨の価格上昇率から推計された場合は、とんでもないことになりそうですが・・・。
細かい部分はわからないけど、大きな金額についてはわかるような場合、わかる部分を根拠にしながら細かい部分を補足して所得金額を計算するなどして所得を決定するということも考えられるのではないかと思います。
つまり、推計して課税するという方向になったとしても、大きな部分に関して、根拠を持って臨めば、とんでもないことにはならないのではないかと思っています(税務署は正しい申告と納税を支援してくれる所のはずです)。
過去の事は思い出せないのは、もういいじゃん・・・、って訳にはいかないので、この際、税務署と相談して早めに清算するのも手ではないでしょうか。
ただ、正確に計算できる方が無駄な税金を支払う可能性はかなり低くなるはずです。
出来るのであれば、正確に。損失が出ているのであれば資料など証拠は処分しない様に保管しておきましょう。
これからは、ちゃんとメモなり資料を残すなりして、計算できるようにしておく方が得策では?
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