第8回:仮想通貨証拠金取引 自主規制でレバ最大4倍/Lev 4:1 on cryptocurrency margin trading
■通貨ごとのレバレッジ/ leverage on currency or account
まずは、日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)がレバ自主規制4倍にこぎつけた努力を評価したい。ただし、通貨ごとに変動率は違うのだから通貨一律に同じレバを掛けるのは現在の店頭FXの“口座”に対する4倍という単純モデルを踏襲したように見える。
従来からの個人的主張だが、通貨に対してではなく口座に対して一律にレバ規制を掛ける日本の現行規制モデルに対して欧米の規制当局は通貨ごとに調整する。さらに欧米は市場の見通しとして変動率が上がるという場合臨機応変にレバ規制比率を変える。ブレグジットの時もそうだったし、スイスショックの時もそうだった。そういう機動性を最初から盛り込まないところは、日本の金融規制の弱点である。そういう機動性は投資家を守るだけでなく業者をも守るものなのだが。また、その倍率は市場動向と予見されるイベントを考慮して機動的に変更できるようにしておくことである。
■改正資金決済法に自己資本規制(比率)はない/ No Capital Adequacy Ratio
さらに、あと一歩踏み込んでほしいのは、自己資本に対する規制だが、これを自主規制でやるのは無理があるかもしれない。金商法の自己資本規制と同じルールを自主規制で行うことは理論的にはたやすいことだが現実的にそれを自主規制でやるのは困難なように見える。ちなみに金商法の資本金規制は5千万円以上だが、改正資金決済法では1千万円以上である。変動率はおおむね仮想通貨のほうが高いのにハードルの高さは逆転している。
■改正資金決済法にレバ規制はない/ No leverage Restriction in Payment Law
金商法にはレバ規制があるのに改正資金決済法にそれがないのはなぜか。簡単に言えば、前者は最初からレバ取引をすることと、店頭なので業者がポジションを抱えることが前提なのだが、後者は現物の交換業(両替商)で、そもそも市場リスクを負わない前提だったからということだろう。少なくとも私はそう解釈している。ところが仮想通貨交換所は突然証拠金取引を始めるし、「取引所」と言いながら店頭取引であるマーケットメイクもする。それは想定外だったのだろうか。いやそうではないだろう。
■業者の市場リスクはある/ Market Risk still exsits.
伝統的な意味での金商法で定義される公設認可「取引所」は客同士がぶつかり合う板を提供するものであり取引所自体は市場リスクを負わないのだが、改正資金決済法でいう「交換所」は「店頭」である。当然在庫リスクという市場リスクを負うことになることを前提としている。マーケットメイクするということは交換レートも業者の任意となる。つまり規制当局は最初から市場リスクを抱えることを前提としながらも自己資本規制としては金商法よりも低い改正前からある資金決済法の1千万円のままとした。それ自体は他の資金決済業務を行う事業者と同列に扱うことを考えれば納得できるのだが、問題はやはりレバ取引である。
資金決済法の許の営業行為としてレバ取引が含まれるとは普通誰も思わない。今も建付けとして、それは資金決済法の対象ではなく無法状態ということのようだが、だからといってそれが本来許されるわけではない(と私は思っていた)。そうであるなら金商法下のFX業者もやってもいいだろうに、いまだ誰もやらない。この辺の成行きに関してはとても不思議だと思っているが、今はあくまでも対応過程であると私は認識している。
私の結論はいまだ変わらない。CFDは原資産が何であれ金商法の店頭金融デリバティブに集約すべきである。
ここでいうCFDは“店頭・公設取引所の指数取引による差金決済“を意味する。店頭・取引所(くりっく365)FX証拠金取引、店頭証券CFD、店頭コモディティCFDそして店頭・取引所(交換所)仮想通貨証拠金取引、それら全部を含む。
証拠金取引を板方式で客同士がぶつかりあうモデルに限定していればそこから市場リスクは発生しない。マーケットメイカー方式の場合はカバーした分との差分が市場リスクの源泉になる。これらの考え方は店頭FXと何ら変わらない。仮想通貨を原資産としながらも、決済は円だけになるからキャッシュの市場リスクもない。
仮想通貨の証拠金取引はすでに現物のそれの10倍になっているそうである。こうなると店頭FX証拠金取引と何も変わらないのだから分けて管理する意味はない。意味があるのは現物取引だけである。