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ビットコイナーと税理士の狭間で

第9回「詐欺にはご注意を」

オレオレ詐欺、振り込め詐欺など、詐欺にも色々な詐欺があるそうな。


詐欺にあうケースは、一般的にそれほど高くないと思っていたのですが、暗号通貨界隈では、詐欺に関する話を聞かない日はないぐらい頻繁にあります。

何をもって詐欺(SCAM)か、いまいち掴みきれませんし、それが詐欺と言い切れない難しさもあり、詐欺ってなかなか立件できないんだなぁ、と、この界隈に関わって実感しています。


ICO、クラウドマイニング、HYIP・・・など、ちょっと想像以上にヤバそうなので、税務上の扱いを整理してみます。
詐欺と言いきれない難しさ同様、こちらも所得税法上、必要経費(仮想通貨トレードの利益からマイナスすることができる経費)に算入できるか非常に難しいです。

例えば、オレオレ詐欺や振り込め詐欺にあった場合、税務上の救済措置はありません。
国税庁HP: https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1110.htm

雑損控除とは、災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けることが出来る制度です。また、生活に通常必要でない資産(趣味、娯楽用の資産など)であっても、災害又は盗難若しくは横領は、一部、救済措置があります(所得税法62条)。

これは、自分が予測することが出来ずに受ける被害であるため、所得税法上もこのような措置がとられています。
対して、詐欺は、自分で判断する余地があったうえで受けた被害という考え方のため、災害、盗難などと違い、救済措置がありません。残念ながら。
生活用資産(この場合、現預金)を詐欺によって失っても、給与所得などからマイナスすることは出来ないということになります。

では、このような状況を踏まえた上で、仮想通貨の詐欺にあった場合、どうなるでしょうか。

■仮想通貨での詐欺にあった場合

まず、仮想通貨で詐欺にあっても、雑損控除の適用を受けることは出来ません。雑損控除の要件に、「詐欺」は含まれないので、仮想通貨でも同様です。「詐欺」かどうかわからない案件に関しても、雑損控除の趣旨から考えると、仮想通貨を自らの意思で送金しているため、雑損控除の適用を受けることは非常に困難でしょう。

雑損控除の適用を受けることができないということは、わかりました。

他に取扱いがなければ、救済措置なしで、オワターです。

残るは、経費として、他の仮想通貨の損益と合算できるかどうかにかかっています。

仮想通貨の損益計算は、原則、雑所得です。雑所得の計算は、
収入金額(仮想通貨売却金額)-必要経費(仮想通貨の売却金額に対応する購入金額など)です。

仮想通貨の必要経費に算入できる金額として関連がある条文は、主に所得税法37条と所得税法51条です。

所得税法37条(一部抜粋)
(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

所得税法51条(一部抜粋)
(1)事業の用に供される固定資産等について、取りこわし、除却、滅失その他の事由により生じた損失の金額
(2)事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金等の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額
(4)雑所得を生ずべき業務の用に供され又はこれらの所得の基因となる資産の損失の金額

一般的に、詐欺による被害は、その詐欺にあった金額を事業所得や雑所得の必要経費に算入することはできないと言われています。詐欺による損失を必要経費としてしまうと、相手方等が不明なことを良いことに架空の経費を計上するなどの事態が想定されることも一つの要因だと考えられます。

しかし、一方で、「業務遂行上生じた」場合には、必要経費とできるケースがあります。

例えば、小売業で、商品を仕入れるため振込をして、粗悪品が届いた、又は、商品が届かず、相手先に逃げられたなどであっても、事業を遂行するために必要であったということが、証拠資料などで証明・説明できる場合、必要経費と認められます。

個人の場合、「業務遂行上生じた」ということが明確に生活用資産と区別することができることも必要になってきます。仮想通貨は、利益を得る目的の人が多いですが、利益を得る目的のみの用途として存在する訳ではありません。雑所得の「業務上生じた」という扱いで必要経費と認められるのか、曖昧になってくるのではないかと考えます。

心情的には、そんなの考えるまでもなく、必要経費・・・と思いたいのですが、自分の身を守るための準備はしておくべきです。わかりません、覚えてませんというフレーズが通じれば良いですけどね。

利益を得る目的で生じたことを証明するため、証拠書類は、確実に残しておきましょう。相手先、目的、資金を投入した事実など証明できることが必要です。それに関するあらゆる資料は残しておく。今更・・・かも知れませんが、サイトとか消えちゃうんだから。

ICO、クラウドマイニング、HYIPなど、税務上からみても安易にカネを突っ込むことのリスクは相当高いです。

かく言う私も、今なら、やめとこって思うんですけど、マイニング儲かるの、スゲーって勘違いしていた時期にクラウドマイニング(だったのかも怪しい)に手をだしたことがあります。言えた義理じゃないですけど、詐欺にあうリスク、税務リスクなど良く理解したうえで判断しましょう。下手をすると、詐欺にあってカネはなくなるうえに、税金はとられるというジゴクが待っています。

ちなみに詐欺側の所得税法上の扱いは、収入金額とする金額は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わないので、詐欺で儲けようが課税されることになります(申告している詐欺師がいるとは思わないけど)。

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丸山正行税理士事務所

プロフィール

丸山正行

丸山 正行

Masayuki Maruyama

丸山正行税理士事務所 代表(ビットコイナー税理士)

2012年08月 税理士試験合格(簿記論、財務諸表論、法人税、所得税、消費税)
2014年01月 税理士登録
2015年05月 ビットコイナー
2016年08月 TAKARAで初トークンをゲット
2016年11月 ペペコイナー
2017年02月 税理士報酬をビットコインで初決済
2017年04月 メモリーチェイナー
2017年04月 エコビットコイナー

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