【寄稿】<対策>仮想通貨確定申告の税務調査(お尋ね)について
仮想通貨の確定申告の税務調査の連絡もしくはお尋ねがきて、ドキドキしている方が当記事をご覧いただいているのではないでしょうか。この記事では国税調査官が気にしていると思われることとその対応方法をご紹介します。
この記事で少しでも不安を解消して欲しいと思いますが、一方で現実を受け止めなければならないときもあります。
税務調査の連絡は、顧問税理士がいる場合にはまず税理士にきますが、仮想通貨の確定申告はご自身でされている方も多数いるかと思います。はじめてのことで不安だと思いますが、国税調査官がどのような視点で調査にくるかを想定しておくことで、少しでも心の準備をしていただけたら幸いです。
きちんと偽りなく確定申告をした人は、国税調査官の質問に自信をもって受け答えしていきましょう。
なお仮想通貨の税務調査は未だ前例が少なく、当記事は個人的な見解も多く含まれておりますので、一切の責任は負いかねます点ご了承ください。
■国税調査官はなにを気にしているのか!?(3つの注意点)
1. 仮想通貨取引の損益を正確に計算できているか?
これは基本的な仮想通貨取引の損益を正確に計算できているかということです。ほとんどの方は仮想通貨損益計算システム(cryptactなど)を利用して申告しているのではないでしょうか。
仮想通貨損益計算システムの正確性もシステム会社によってまちまちで、同じ取引データを取り込んだのにA計算システムとB計算システムで計算結果に数百万円の差異が出た例もあります。
またほとんどの仮想通貨損益計算システムはアップデートを随時実施しており、どの時点で取引データを取り込むかによって損益計算結果が異なる事態も生じています。
システム会社も、免責事項でシステム利用者の計算結果は保証していないところがほとんどです。
また、システムを利用せずエクセルで手計算した方は、計算式が正しく組めているか、もう一度確認してみましょう。
2. イレギュラー取引の税務処理の妥当性
前回のICO取引の税務処理の記事で記載したように、仮想通貨の世界では税法上、未確定の取引が多々あります。
税法上の処理が未確定の仮想通貨取引について、租税原則や関係法令規則等の趣旨に従って正しく税務処理をしているか、不当に税金を低くするような処理をしていないかというところがポイントです。
当記事では詳細は割愛しますが、仮想通貨を貸付する取引や相対取引などイレギュラー取引は多岐にわたります。その一つ一つの処理が、税法の趣旨からかけ離れていないかどうか確認しましょう。
3. 仮想通貨取引を漏れなく集計して損益計算しているか?
税務調査では、この仮想通貨取引の網羅性が一番重要であると考えられます。
過失による損益計算の誤りは、その誤っている金額が少額であることが通常想定されます。しかし、取引の漏れは故意による可能性が高く、税金を低くするための過少申告である可能性が非常に高いからです。取引の漏れによる過少申告は脱税を疑われる可能性もあります。
- 本当は取引をしている海外取引所について、仮想通貨損益計算システムに取り込まなかった。
- ICO取引について、損益計算の対象に含めなかった。
- 現金換金業者を利用して相対取引をしたが、損益計算で集計しなかった。
例えば、漏れなく集計できていない例としては以下のようなものがあります。
これらの取引が損益計算から抜けている場合、確定申告で納める税金がガラッと変わってしまいます。
今回の記事ではこの取引の網羅性について、もう少し掘り下げてご紹介していきます。
■過少申告を疑われないためにどのような準備が必要か
集計されていない取引について、税務調査官はどのように発見することができるのでしょうか?発見できると考えられる方法とその対応策をいくつかご紹介します。
損益計算結果の保有コイン数(ポジション残高)と仮想通貨取引所の保有コイン数(ポジション残高)が整合しているか?
損益計算を行った結果、期末の保有コイン数を算定することは可能です。例えば1ビットコインを購入し、その後0.5ビットコインを売却し期末を迎えたとします。
期末日保有コイン数は0.5ビットコインとなり、理論上は仮想通貨取引所に表示されている保有コイン数と一致するはずです。しかし、ICO取引の集計漏れや、海外取引所の集計漏れによって保有残高が合わないないことが多々あります。
真偽は不明ですが、2018年の年始に国税庁が取引所から顧客データを入手しているという報道が出回っていました。もし本当であれば前述の検証も不可能ではありません。
疑われないようにするためにも、期末日の日付が変わる24時に仮想通貨取引所の保有コイン数をスクリーンショット等で保存しておくことが大事です。
Google Authenticatorに登録している仮想通貨取引所の調査
仮想通貨取引をしている人なら誰しもが利用しているでしょうGoogle Authenticator(二段階認証アプリ)です。昨今のハッキング被害を予防するためにも、皆さん二段階認証を設定して各仮想通貨取引所を利用しているかと思います。このGoogle Authenticatorの提示を税務調査官に求められることがあるかもしれません。
登録されている仮想通貨取引所と申告している仮想通貨取引所が整合していない場合には注意が必要です。申告をしていない資産、すなわち簿外資産を保有していることを疑われる可能性が高いからです。
仮に、Google Authenticatorには登録したけれど一切取引をしていない仮想通貨取引所がある場合には、その取引所の取引データや入出金データを準備しておきましょう。
相対取引先の税務調査からの反面調査
ここでいう相対取引とは仮想通貨取引所を経由しないで現金化する取引をいいます。巷では仮想通貨を現金化するための業者もいるようです。
相対取引先に税務調査が入り脱税が発見された場合、反面調査として取引相手である本人にも税務調査がくる可能性があります。また相対取引はマネーロンダリングを疑われる可能性が非常に高いです。
仮に相対取引をしてしまっている場合には、税務上では贈与税に該当してしまう場合があるなどかなり複雑な処理になりますので、仮想通貨に精通している税理士に相談してください。
おわりに
手を抜き適切な確定申告をしなかったために、過少申告加算税や重加算税で数百万円の税金を追加でとられてしまっては、せっかく稼いだ仮想通貨取引がもったいないですね。
節税対策をしつつも正確な損益計算をすることでご自身を守りましょう。
当事務所は税務調査のみの対応も可能です。調査の連絡が来て不安な方はお気軽にご相談ください。
(当記事は2018年5月18日時点の状況に基づいて記載しております)
【特別寄稿】
ホワイトテック会計事務所
仮想通貨トレーダーの確定申告に特化しており、日本仮想通貨税務協会(JCTA)の認定仮想通貨税理士事務所。仮想通貨分野に精通しており、多くのトレーダーの税務相談を受けている。仮想通貨の節税対策からリスク管理、ブロックチェーンビジネスの支援、ICOコンサルなどフィンテック分野のサービスを主に展開している。