第4回「仮想通貨と店舗決済の所得税について考える」
最近、ハン・ゲンキ氏やセグウィット氏が仮想通貨の価格をコントロールしているのではという噂や8月1日に向けて資産を減らさないためにアタマを悩ませているなか、続々と仮想通貨での決済店舗が増えてきています。
みなさん、仮想通貨で決済してますか?私は、ほぼしてません(長野県も決済店よろしくw)。
会計基準をどうするかの議論が本格的にスタートしていますが、正直、個人(所得税)の扱いは、まだまだ、先かな?って思っているので、勝手に仮想通貨で店舗決済した場合の税金について考えてみようと思います。
早速ですが、税の三原則って知ってますか?
税制を構築するうえでの基本原則として、
①公平の原則
・同じ経済力(所得)の人は同じだけ税を支払う(水平的公平)。
・経済力(所得)が高い人の方がより大きな税を支払う(垂直的公平)。
②中立の原則
・経済活動における選択をゆがめない様にする。
③簡素の原則
・納税額の計算が出来るだけ簡単に理解しやすいものにする。
異論はたくさんあるかと思いますが、この基本原則や会計基準等を基に税法が成り立っています。
問題です。
次の3人のうち、課税されるのは、誰でしょうか?
※答えは、まだ、明確に決まってませんw
2014年2月に1BTCを5万円で購入した、ケッサイ氏とカンキン氏。
ビットコイン?そんなものは・・・と言って購入しなかったカソウ氏。
その3人が平成29年7月に、
Aケッサイ氏
去年購入した1BTCで25万円の腕時計を購入(決済)しました。
Bカンキン氏
同じく、去年購入した1BTCを取引所で25万円に換金したおカネで腕時計を購入しました。
Cカソウ氏
労働で得たおカネ25万円で腕時計を購入しました。
労働で得たおカネは、既に税金が課税されたあとです。
カソウ氏は、カンキン氏に対して、もともと5万円だったビットコインを換金して25万円のおカネを得ているのだから、労働で得たおカネと同じように課税されるべきだと言います。
カンキン氏は、ケッサイ氏だって、もともと5万円だったビットコインで25万円の腕時計を手に入れたんだから、日本円に換金して得た場合と同じように課税されるべきだと言います。
ケッサイ氏は、いやいや、日本円にしてないんだから、利益なんてないよ、課税されないと言います。
課税の公平性を考えたとき、儲け(所得)が生じていれば、課税の対象です。
Bに課税するならAも実質的に儲けを得ているのだから課税するということになります。これが水平的公平です。
そして、所得が大きければ大きいほど税率が高くなります。これが垂直的公平です。
(第2回コラム:億り人~税金はいかほどに?~参照)
この考えからすれば、仮想通貨をたとえ店舗決済しても、取引所で換金した場合と同様に所得税が課税されることになります。
ではなぜ、税務署に問い合わせるとばらばらな回答になるのでしょうか?
それは、①公平の原則以外に残り、②中立の原則、③簡素の原則が存在するからです。
②中立の原則
店舗決済において直面する出来事で、仮想通貨で決済したくても、税金を計算することを思うと面倒で使えないという経済活動における選択を歪めています。
③簡素の原則
課税しろって言うけどさぁ、じゃぁ実際問題、日本円と同じように日常的に決済したら、税金の計算なんて煩雑すぎて出来ないよ。
この2つについて、もう少し、掘り下げていきます。
日常生活において、いらなくなった衣料品や家具、ゲームなど売却することがあります。
これも、原則的に言えば、儲け(所得)が生じるため、課税の対象なのですが、実際には所得税は課税されません。所得税法上、条文で「非課税所得」の扱いとなっているので、非課税になります。
ただし、日用品等の売買でも、営利を目的として継続的に行なわれる場合は課税です。
所得税法第9条(非課税所得)抜粋
次に掲げる所得については、所得税を課さない。
第一項第九号 自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得。
所得税法施行令第25条(譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲)
第二十五条 法第九条第一項第九号 (非課税所得)に規定する政令で定める資産は、生活に通常必要な動産のうち、次に掲げるもの(一個又は一組の価額が三十万円を超えるものに限る。)以外のものとする。
第一項 貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品
第二項 書画、こつとう及び美術工芸品
これは、中立の原則や簡素の原則から考えて、課税するのが難しい、日常生活のちょっとした事に関しても何でもかんでも課税するのは、無茶だよねってことです。でも、利益を得る目的でやっているのなら、課税しないと公平じゃないよねってことで対象範囲を限定しています。
仮想通貨も、税務署への相談の仕方によっては、現行税制においても「生活に通常必要な動産」に該当するということで非課税という回答もあったのではないかと推測されます。
恐らく、税務署に相談する際に、仮想通貨に関する自分が取引をした資料を全部を持参せずに、仮想通貨の店舗決済して課税されませんか?とそこだけ聞いたような場合には、「営利を目的として継続的に行っている」という部分を考慮していないことが考えられます。
個々の状況等を踏まえたうえで、税務署も判断している?と思います。
それが自分の状況に当てはまるとは限らないので、自分が聞いた回答を拡散するのは、どうなんだろうなぁと考えてしまう部分です。
個人の見解としては、課税するのは困難だと認識していますし、30万円以下の決済が非課税になれば良いなという願望もあります。少額決済が非課税になれば、経済政策で、会社は従業員の給料上げろやーって煽るより、経済効果が生まれると思うんですけどね。
ただ、非課税=損失も無かったことになります。上昇し続ければ良いですけどね・・・。
消費税の非課税の時もそうでしたが、条文で「非課税」として扱われない限りは、課税であり、さかのぼってまで非課税にはなりません。
現行税制においては、現在の条文上に定義される「非課税所得」に該当しなければ、無茶だ、できません、と駄々をこねても課税です。下手をすれば推計課税(税務調査において、計算できない(するのが面倒な)場合は「推計」で税額を算出する方法)なんてこともあります。そのことはお忘れなく。
ということで、改めて結論。
Aは、課税。所得税を納めましょう(納めるつもりで準備して、非課税と主張するのも…)。
Bは、課税。所得税を納めましょう。
Cは、現時点では、残念。仮想通貨の世界へどうぞw