第15回「仮想通貨税」
仮想通貨税…、そんな税金ないですよ、くれぐれも間違えない様に。
先日、仮想通貨の売買による所得の課税方式を、株式投資と同じ「申告分離課税」へという取り組みをしている、と言う記事をコインチョイスで見かけました。
▼7,500人以上が賛同 仮想通貨の課税を株と同じ申告分離課税へ!
国もやりたくてやっている訳ではなく、今の法律からはそうするしかないので、止むを得ずです。
このままではよろしくないので、私も考えてみようと思います・・・、既存の税法は無視して、ずばり、仮想通貨税法の新設です。これまで通り、法人税は課しますが、所得税は非課税にし、取引所でのトレード時のみ仮想通貨税を徴収します。
- 計算が難しい
- 税率が高い
- 決済に使いづらい
どれも解決すべき問題ではあるのですが、一番問題なのは、正直者が馬鹿を見てしまう結果になることです。
インターネットを通じて、管理・制限されることなく容易に価値の移転が行われ、国を簡単に飛び越えられる現状において、真面目に申告する人よりも、黙って申告せずに税金を払わないで済んでしまう人が出てきてしまうことが納得いかない、不公平感を生み出してしまいます。そういうことが起こらない様に国も多大なコストをかける必要が出てきてしまい、本来やらなければいけないことが出来なくなることにもつながります。
何とは言いませんが、高い所から低い所に流れます。それが顕著に表れるのではないでしょうか。
納税者、国の両方にとって、好ましい状況ではありません。
また、2018年1月26日、コインチェック株式会社から5億2300万XEM不正に外部へ送金されました。
▼Coincheckサービスにおける一部機能の停止について
自己資金により、補償すると発表があったものの、返金される目途も立たず、出金も出来ない状況です。
源泉徴収や予定納税「税の前払い」の必要性を改めて感じます。
源泉徴収で有名なのは給与からの天引きです。あとは、株式、FXなど。
給与では、税金払うことになるだろう金額を毎月、会社が社員から、強制的に預かって税務署に納めます。これを源泉徴収と言います。
確定申告時にまとめて納めれば良いと思っていても、世の中、何が起こるかわからないというのを痛感したかと思います。JPYがないからといって、免除されることもなく、銀行も納税資金という名目では、貸してくれません。
源泉徴収は、国が納税者を守るための制度でもあります。
それら踏まえて、「申告分離課税制度」による方法が選択肢の1つとして考えられます。
現状、申告をする人とって、特に頭を悩ませているのは、「計算が難しい」という点にあります。しかし、申告納税制度を採用している所得税法において、「申告分離課税制度」をとったとしても、「計算が難しい」を排除することが出来ないのではないかという懸念がありますし、取引所が「利益」の一部を源泉徴収するということも実務上は困難になると想定されます。
例えば、取引所Aで仮想通貨を購入し、取引所Bで仮想通貨を売却した場合、取引所Bが単独で売却損益を計算することは不可能です。
何故なら、取引所Aで購入した金額を取引所Bは知り得ないからです。基本的な所得の計算は、収入金額-必要経費です。仮想通貨の売買だと、売却金額-購入金額(売却に対応する部分)です。取引所Bは、購入金額がわからないので、所得(利益)を計算することが出来ません。購入金額を知り得るのは、納税者本人又は取引所Aになります。
しかし、その納税者も取引所Aで売買を繰り返したのち、取引所Bに送金した場合、果たしてどうなるのか。すべての取引所が連携をとって計算してくれるのならば、この部分については解決できるでしょうが、現実的ではありません。従って、仮想通貨の所得の計算できない、源泉徴収できない、は、変わりません。そうなると申告分離と言っても、今の高い税率を何とかしたいだけになってしまいます。それだけでも十分ということではあるのですが・・・。
申告区分離課税制度でも、計算ロジックを変えることによって計算を簡単にすることは可能でしょう。
しかし、申告する人にとって「計算が難しい」であり、それ以前に、一番問題は、正直者が馬鹿を見てしまう結果になることです。これは、申告分離課税制度で納税者自らが申告をする方法では解決できないのではないかと考えます。もちろん、現金取引が行われていた時から、ずっと解決すべき問題です。
特に近年、シェアビジネスなどの発展により個人間での取引が当たり前の様に行われ、課税漏れ、所得を把握することが困難になっています。シェアビジネスとも仮想通貨は相性が良い。また、仮想通貨の本来の目的を考えたとき、現状の税制を見直す時期にきているのではないでしょうか。
仮想通貨は、取引所のトレードに限らず、
- マイニングした場合
- 店舗決済をした場合
- 海外取引所で売買した場合
- DEX(分散型取引所)で売買した場合
- 個人間(相対)で取引をした場合
などなど、納税者しか知らない部分が多く存在し、これからも拡大していく中で納税者自らが計算を完結するのは、困難と言わざる負えません。申告納税制度である以上は、常に計算が付き纏うことになってしまいます。
計算を簡便化し、申告分離課税制度でも良いとは思います。所得税だけでなく法人税の兼ね合い、課税の公平、色々な角度から考える必要があり、そんな単純な話ではないことは重々承知のうえです。しかし、既存の法律ではなく、「仮想通貨税法」という新たな法律による選択肢も視野に入れるべきです。
例えば、国内取引所での売買に関しては、売買の都度、手数料の様に一律で税を徴収し、取引所が税務署へ納税。
マイニング・店舗決済・個人間取引は、最終的には取引所等を経由して売買されることを想定し、その時点においては課税しない。
若しくは、店舗決済時において、消費税等に上乗せして店側が仮想通貨税を徴収し、税務署へ納税。
海外取引所やDEXは禁止…、には出来ないので、ここは自分で計算して、税務署へ納税・・・、一見、良さそうに見えても、網に穴が空いている部分が出てきてしまい、仮想通貨の特性上、やはり網羅的にとらえることが困難です。
また、一律に税を徴収する方法を採用すると、損益計算をしていないので、例え損失が発生したとしても還付されることがありません。申告納税制度は、利益計算をするというところで、経費を計上することができ、利益に対して課税する事になるので、利益が出ていないのに課税されることはありません。損失を繰り越すことも検討できます。この辺りは、申告納税制度のメリットです。
高い所から低い所、国内の取引所では仮想通貨税がかかるなら、海外やDEXなどにという流れにもなるでしょう。
国内で課税することは、海外への流出に繋がります。
従って、仮想通貨に税をかけるよりも、国内で仮想通貨の消費(使用)活動を促進することにより、経済効果を生むような流れを作り、いかに仮想通貨の利益を国内で消費させるか。そうすることにって消費税UP、会社の利益が増えて法人税UP、給料が増えて所得税UPなど、仮想通貨の利益に直接税を課税するのではなく、間接的に税を徴収することによって、税収を最大限にすること。
つまり、色々考えたけど、やっぱムズカシイし、国益のために、仮想通貨は、非課税という結論になりました。
▼「ビットコイナーと税理士の狭間で」をご覧のみなさまへ
当コラムで取り上げて欲しい話題、また丸山先生へのメッセージ・ご感想などあればこちらからご投稿ください。