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過熱感に満ちたビットコイン市況

 2017年も終盤に差し掛かり為替市場では11月の雇用統計を終えた。この三連休の間にビットコイン円は86万円を突破し過去最高値を更新し続けている。この記事を書いている11月5日時点では86万4千円といった高値水準を維持している状況だ。



市場関係者を含め各所から「この流れはいつまで続くのでしょうね?」といった質問を頂く機会が増えた。個人的には20~30万円くらいが適正水準と考えてきていたためこの水準は正直いまだにしっくりこない。不思議な過熱感を帯びた市況というのが正直な印象だ。

その背景には、やはり、為替と異なる様々な要因があるのだと思う。

私見ではあるが、30万円程度までの伸びの背景には

  • 新しい技術に対する純粋な期待値の高さ
  • 法整備が整ってきた安心感
  • 技術の転用が期待される様々な事業分野の存在(決済・送金・IOTなど)

これらが存在したのは事実だと思う。

しかしその後の臨界点を超えた伸びの背景は正直なところいまだに謎な部分は多い。個人的には30万円を超えてから爆発的に値を伸ばした背景には下記のような要因が複合的に関与しているのではないかと考えている。

  • ビットコインの本質を理解している投資家がまだまだ少ない
  • 認知度の飛躍的な向上。特に為替や証券系投資家層にも露出機会が増えた
  • ビットコインを保有している投資家の絶対数がまだまだ少ない
  • 初期のビットコイン投資家層の成功事例の伝播(露出拡大にも再投資の面でも)
  • スケーラビリティ問題に対するソフトフォーク&ハードフォークの実施
  • 広告規制の未整備、サービス水準に対する要求値の低さ(法の未整備)

これらの要素がこの爆発的な伸びに寄与しているのは想像に難くない。要は、「まだ保有者が少ない投資対象だったため、ネガティブ材料に反応し難く(売り手主体が少ない)ポジティブ要素は規制の緩さや成功事例の存在から爆発的に伝播した」というのが実情ではないかと思う。

ビットコインの持つ構造上の問題を解決するハードフォーク&ソフトフォークがある程度円滑に進められてきたことや、ICOというキーワードが投資家の熱狂を促進させる起爆剤になったであろうことも想像に難くない。いずれにしても、投資家としてこの市況を振り返ったとき、これだけ不確定要因が多く介在した相場を深く考察しすぎるのはあまり生産的では無いと考えている。「買いたい人が多くいたので上がった」だけのことであり、重要なのは「今後もそれが続くのかどうか」ただそれだけだ。

その視点で考えた時、この先もビットコイン市況は順調に伸びていくのだろうか?筆者はこの点については相変わらず懐疑的だ。なぜなら「いかにSegwitやハードフォークが実施されたとしても、本当の決済ビジネスの基盤となるにはビットコインのブロックチェーンはあまりに脆弱」だと思うからだ。

VISAなどの代表的なクレジットカードの単位時間あたりの決済処理能力に比べて、ビットコインのブロックチェーンが持つ決済処理能力は約300分の1程度。これがSegwitやハードフォークで仮に2倍~8倍程度まで伸びたとしても、グローバルにマイクロトランザクションを拾い、処理していく基盤としてはやはり技術的に不安を拭い切れない。

また、この2年間で価値が20倍ほどまで増加したボラティリティの高さも「決済」ビジネスを担うには適していないと、これは多くの市場関係者が感じている本音ではないかと思う。そうなると、仮に仮想通貨が世界中の決済を何らかの形で円滑にしていくとしても、それは今現在、仮想通貨市場の大半を占めているビットコインそのものでは無いのではないかと思うわけだ。

技術的にはイーサリウムの方が余程可能性に満ちていると思うし、そもそも、マイナー(決済処理代行者)はパブリックで分散的であっても良いと思うが、技術基盤の提供者まではパブリックでなくとも良いと、一連のSegwit2X騒動を見ていても強く感じる。

そのリスクの大きさから現実的には当面あり得ないだろうが、Googleのような技術力と運営力の高い企業がプラットフォームをコントロールし、世の中にマイニングツールを提供してくれたら、劇的に仮想通貨市況は変わるのではないかと思う。

この辺りはマネロン対策、とりわけテロ組織・テロ国家への資金の流れを確実に食い止める、といった仮想通貨業界が潜在的に持つリスクへのコントロールと法規がもう少し整っていかないと難しい議論だとは思うが、それらがクリアになったときは今のビットコイン価格の伸びとは比較にならない価値の転換が起き得ると筆者は考えている。

そして、重要なのはそれらが整っていくまでの間、この「ビットコイン」という現役仮想通貨の代表選手がどのような立ち位置で価値を増減させていくか、それを如何に掴んでいくか、ということだと思う。

多くの投資家やビジネスプレイヤーが現在のビットコインに期待する側面として「決済」や「送金」その他の情報処理、トランザクション処理基盤としての役割をまだ期待しているはずなのだ。それが他の新たな仮想通貨に奪われていくなかで、「純然たる価値の代替物・投資対象」としてのビットコインの立ち位置が変遷していくであろうことは、私の中ではかなり確度の高い未来と感じている。

その過程で、新たな仮想通貨にリアルビジネスを支援する基盤としての権能を移譲しつつ、同時にビットコインそのものの価値を維持していくのか、それとも価値が下がってしまうのか。どのような仮想通貨が今後出てきたとしても、それらの通貨とのEXCHANGE(両替)は可能であろうことから、そうした視点が一般投資家に浸透してきた際の相場動向を追うのは、また面白いのではないかと思う。

正直なところ、現在の仮想通貨市況でこれらの視点まで考慮して価格の推移を予想しているプレイヤーはまだまだ少なく、リスクも顕在化していないのが現状だろう。それがレートにも顕著に現れている。これはこれで健全な流れだ。そして今後、この市場がさらなる大きな高みにたどり着くまでには、一旦多くの市場参加者がこれらのリスクや背景を知覚していく必要があると思う。その際には当然のことながら、一定の相場の下落も伴うことだろう。

為替市況がそうであるように、プレイヤーが増えて相場情報が各プレイヤーに浸透すればするほど、一方向への一方的な流れというのは起き難くなる。ビットコイン保有済みのプレイヤーが増えれば増えるほど、少しのネガティブニュースでも売りを呼び込みやすくなるからだ。

今回の記事はことさら、投資家視点からの見解に寄せて寄稿してしまった節があり申し訳なくもあるが、個人的にはこうした仮想通貨市況の成熟が嬉しくもあり、いつかはこうした純粋な投資家視点からの記事を書きたいと考えていた。ここまでの熱狂感を帯びたビットコイン市況をこんな早い時期に見れるとは正直思っていなかったため、本当に感慨深い気持ちでもある。

現在の仮想通貨市況は私が数年前想像していた以上に速いスピードで成熟を続けている。この市況が今後も健全に伸びて、私のような生粋の為替トレーダーがより多くの選択肢と情報をもって、投資に取り組める日が来ることを願いつつ、この可能性に満ちた市場を事業家として、また投資家として、応援していきたいと思う次第だ。


プロフィール

福寄 儀寛

福寄 儀寛

Norihiro Fukuyori

株式会社イー・ソリッド 代表取締役

2002年東京大学法学部卒業。在学中1999年よりFX投資を始め、現在も国内有数の大口個人投資家としてトレーダーとしては現役。一方で個人投資家の投資環境改善と技術啓蒙のための講演活動にも従事しており、日本国内の様々な金融事業の発展に取引プラットフォーム開発や情報サイト提供という形で貢献。

2007年以降サイバーエージェントFXの取引インターフェース、情報配信責任者として貢献した後、フォーランドフォレックス社(その後のFXCM社)における事業設計や、国内金融アプリケーション開発のリーディングカンパニーであるモバイルインターネットテクノロジー社での新規事業開発に従事。
2015年には上場企業の運営する国内初のビットコイン事業として「J-Bits」をJトラストフィンテックにて創立。同時に、国内最大規模の仮想通貨情報サイト「コインポータル」も運営。

2017年3月に全ての投資サービス事業運営から身を引き、純粋な投資家活動を再開。1998年の外為法変更後の最も原始的な国内FX市況から現在に至るまで、国内外の投資プラットフォームに精通する識者として幅広く情報配信にも寄与する。

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